エンタメが友だちとの仲をさらに深めるきっかけに。オンラインのたまり場アプリ「パラレル」 | パラレル ✕ NTTドコモ・ベンチャーズ | 株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ

Activities

2024.07.16

エンタメが友だちとの仲をさらに深めるきっかけに。オンラインのたまり場アプリ「パラレル」 | パラレル ✕ NTTドコモ・ベンチャーズ

エンタメが友だちとの仲をさらに深めるきっかけに。オンラインのたまり場アプリ「パラレル」 | パラレル ✕ NTTドコモ・ベンチャーズ

2024年、株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ(以下「NDV」)は、ゲーム・動画・音楽などのコンテンツを友達と一緒に楽しめるオンラインたまり場アプリ「パラレル」を提供するパラレル株式会社(以下「パラレル」)への出資を発表しました。

パラレルの登録者数はZ世代を中心に500万人を超え、アクティブユーザーの7割が1日3時間、週に5回以上起動するという、「仲の良い友達」とオンラインで一緒に過ごすためのプラットフォームとなっています。NDV投資担当の三好は「パラレルのようなサービスこそ、本来NTTドコモが作らなければならなかった」と言って憚りません。

どうしてパラレルはここまでユーザーに使われるサービスになれたのか、NDVは投資を決意したのか、両社の共創はどう築いていくのか。パラレル社共同代表の青木穣さんと、NDVの三好大介に聞きました。

FPSのニッチな課題解決から始まった「オンラインのたまり場」

── パラレルについて教えてください。

青木(パラレル):
パラレルは友達と遊べるたまり場アプリです。ユーザーはオンラインで友達と合流し、通話やチャットをしながらパラレルに用意されている30のミニゲームで遊んだり、外部のゲームや動画、音楽などを一緒に楽しんだりできます。SNSと称していますが、全く知らない人と関わりをもつオープンなものではなく、仲の良い友達とクローズドにコミュニケーションを取るためのサービスです。子供の頃、誰しも友達の家で遊んだ経験はあると思いますが、それをオンラインで実現したイメージですね。

青木 穣 | AOKI Jo パラレル株式会社 代表取締役
青木 穣 | AOKI Jo
パラレル株式会社 代表取締役

1990年生。神奈川県出身。慶応義塾大学理工学部卒業後、2014年にフリークアウトHDの新卒として入社。子会社の立ち上げ、セールスディレクター等を経て、2017年7月にパラレル社を創業。

三好(NDV):
「友達と遊べるたまり場」というコンセプトが素晴らしいですよね。オンラインの特定のコンテンツではなく、既に存在するリアルな友達と遊ぶという発想が本当に秀逸だと感じています。

『フォートナイト』などのMORPG(マルチプレイヤーオンラインロールプレイングゲーム)に近しいと思う方もいるかもしれません。ですがコンテンツだけで関係を持続し続けるのは簡単ではない。どんなに超大作でも10年遊べるゲームは多くないでしょう。でも、ゲームをやっているうちに友達ができて、友達がいるから遊びに行くとなれば、10年間も関係が継続する。言うなれば友達が最高のコンテンツになるわけです。パラレルはコンセプトが本当に素晴らしいと感じています。

三好 大介 | MIYOSHI Daisuke 株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ Investment Managing Director
三好 大介 | MIYOSHI Daisuke
株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ Investment Managing Director
約20年間VC業界に在籍し、30社近くのベンチャー投資を実行。
IPOやM&Aによるexit等豊富なトラックレコードを誇りつつ、事業連携を伴った投資も得意とする。
その後、イオンリテールの新規事業・Eコマース事業の責任者として事業改革を行い、2023年6月よりNTTドコモ・ベンチャーズのManaging Directorに就任。

青木(パラレル):
ありがとうございます。パラレルは2024年6月現在、登録者数は500万人を突破。月に100万人以上が利用するサービスとなっています。Z世代を中心に小・中・高・大学生がユーザーの7割を占め、男女比はほぼ5:5。アクティブユーザーの海外比率は30%程度で、新規登録者数ベースではほぼ半々です。学校などのリアルの友達同士で使われるケースが6割、オンラインの友達同士が約4割という構成で、仲の良い友達であればどちらでも使われています。3〜5人程度が集まって、1日3時間、週に5回以上起動する方がアクティブユーザーの約7割と、非常に高い熱量をもつユーザーが多いのも特徴です。三好さんが指摘してくれた通り、パラレルのユニークネスはゲームでもコンテンツでもなく、コンテンツを通した友達とのソーシャル体験にユーザーが熱狂している点ですね。

── パラレルは2019年のリリースから急成長しています。リリース当初から今のコンセプトだったのでしょうか。

青木(パラレル):
そもそもサービスを開発する前に僕が感じていた課題は、LINEやInstagramで仲の良い友達と繋がっていても、全員が全員アクティブに投稿しているわけではなく、日常的にその友達とコミュニケーションが取れなかったことです。それが寂しかったんですよね。それで、昔みたいにふらっと集まってコミュニケーションを取ったりゲームをしたりしながら「最近さぁ......」と話せる環境、つまり「オンラインのたまり場」があればいいなと思ったんです。

とはいえ「友達同士でずっとオンラインで過ごす」なんて習慣はこれまでありませんでした。それでまずはニッチな課題を解決し、それを火種として徐々に広げていくのが正しい戦略だと考えたんです。そこで注目したのが『荒野行動』や『PUBG MOBILE』といったFPS(一人称視点のシューティングゲーム)でした。これらのユーザーはLINEやDiscord、FPS内の通話をしながらゲームをしていて、「オンラインのたまり場」に近しい体験をしていたんです。僕自身は全くFPSをやらないのですが、共同代表の歳原は相当なゲーマーでモバイルFPSの課題を理解していました。それで「ここから始めれば『オンラインのたまり場』に繋がるかも」と感じたんです。そこで彼ら向けに、最適な通話環境を提供するサービスを開始。これが目論見通りヒットしました。

その後、モバイルFPSをやらない人たちにもたまり場として集まってもらえるように、パラレルの中に通話しながら遊べるコンテンツを追加したりしました。直近ではパラレルの中でゲームのスコア競争ができたり、自分が観ているYouTubeをシェアする機能を追加。ここまでくると、ユーザーがユーザーを呼び、どんどん利用者が増えていくようになりました。結果としてパラレルは今、学校のリアルな友達と集まってエンタメを楽しむアプリとなっています。

1日3時間、週5で使われるアプリ。その秘訣とは

三好(NDV):
パラレルは1日3時間、週に5回使われるという話がありました。非常に長い時間使われるサービスとなっていますが、ユーザーは3時間ずっとゲームをしているわけではないんですよね?

青木(パラレル):
そうですね。ログインしたら最初はパラレルの中にあるゲームで遊んでみんなが集まってくるのを待ち、メンバーがそろったら『AmongUs』や『荒野行動』といった外部のゲームをプレイする。飽きてきたらおしゃべりタイムに移ります。勉強会をすることもあるし、そのうち抜ける人もいる、といったイメージです。

小・中・高校生時代、皆さんも放課後に友達の家に集まって、テレビを見たりマンガを読んだりして、集まってきたら公園に行ったり、ボーリングやカラオケに遊びに行きましたよね。オフラインでやっていたことを、そのままオンラインでやっているような感じです。

── 利用時間が長いのはなぜなのでしょうか。

青木(パラレル):
パラレルはエンタメコンテンツのハブであり、他のサービスと食い合わないからです。

InstagramでもTikTokでもXでもFacebookでも、そのSNSを離れてしまったら、基本的にはそのソーシャルグラフはもうありませんよね。でもパラレルでは、ユーザーはパラレルに集合して、そのソーシャルグラフを維持しながら色んなアクティビティに移ります。つまり、パラレルを繋ぎながら他のSNSを見たりゲームをすることもあるわけです。その結果、他のゲームやSNSと時間を食い合うことはなくなり、結果として利用時間が長くなるというわけですね。

(提供:パラレル)
(提供:パラレル)

── 先述されていたように、ゲームのコミュニケーションにはDiscordがよく使われています。パラレルのコミュニティとは何が違うのでしょうか。

青木(パラレル):
Discordは本格的なPCゲーマー向けに設計されていて、ユーザーには男性が多いんですよね。実際パラレルのユーザーからも、Discordの男子グループに女子を誘うのは大変だし、女子も参加を躊躇うといった声がよく届きます。またDiscordは、例えばレベルが高い人同士で『フォートナイト』が好きな人たちがクランを組むといったように使われている。これはあくまでコンテンツありきですよね。

青木(パラレル):
でもパラレルはコンテンツを中心にしたいわけではありません。パラレルが大事にしているのは「仲の良い友達と集まれば何をやっても楽しい」というコンセプト。何をやるかではなく、誰とやるか。そういう意味では、ユニバーサルでスマホファーストなデザインを意識しています。実際パラレルは、仲の良い友達同士、さらにはクラス単位など、人やコミュニティを選ばずに使われている。クラスの友達を気軽に誘える点はパラレルの特徴だし、強みですね。

ドコモが作るべきだった。パラレルへ投資した理由

── 2024年2月、NDVからパラレルへの出資が発表されました。

三好(NDV):
NDVが運用する「ドコモ・イノベーションファンド」のスタートアップ投資としては最大の出資額となっています。パラレルのようなサービスは、本来はNTTドコモが作るべきサービスだったと私は思っているんです。ただ我々には作れなかった。その期待感の現れですね。

青木(パラレル):
確かに、ガラケー時代のiモードも、人々が使っている当たり前のインフラの上にエンタメコンテンツがあって、それに課金していましたよね。でも今はそういったインフラはあまりないような気がします。

三好(NDV):
NTTドコモは、ガラケー時代にはiモードがあって、ネットワークに端末、コンテンツを押さえるプラットフォームでした。ですが今のスマホ時代は、ネットワークと端末はあれど、基本的にはコンテンツのプラットフォームはありません。それで今、音楽や動画サービスへの投資を進めているんです。

青木(パラレル):
特にソーシャル×エンタメという切り口のサービスは世の中的にそんなに多くない気がします。ソーシャルというもの自体が相当難しいですしね。繰り返しになりますが、僕らが押さえているのはソーシャルレイヤーで、その上にコンテンツを置くことが大事だと考えています。仲の良い友達といれば、正直コンテンツは何でも楽しくなる。つまらないことすら「つまんねえな」と笑えますからね。

三好(NDV):
先ほど、パラレルは「1日3時間使われている」という話がありました。私はそれを聞いて大絶賛したいところなのですが、レギュレーションが気になってしまう携帯キャリアは、つい「1日3時間も遊んでいたら教育上良くないんじゃないか」なんて発想に陥ってしまうんです。

青木(パラレル):
勉強もしているんですけどね(笑)。

三好(NDV):
たしかに(笑)。なぜかと言うと「使われっぱなしというのがよくわからない」と思ってしまうからです。小・中学生ぐらいの子供がいる人と話していても「子供はそうしているんだけど意味がわからない」なんて発言が出てきます。これは「常時接続」に対する考え方が世代間で異なるからです。

三好(NDV):
大人世代が想定する常時接続は、LINEでもSNSでも、用事があったらすぐに連絡を取れるというもの。一方で若い世代の常時接続は、リアルタイムでずっと繋がっていることを指している。友達の家では、みんな別々のことをしているけど、「そういえばさ......」からコミュニケーションが始まりますよね。そのオンライン版が若い世代の常時接続なんです。でも大人になってしまった携帯キャリアはそんなこと考えつかない。思いついたとしても、レギュレーションで「教育上悪いから配慮しなきゃ」とサービスが死んでいってしまう。だからキャリアはパラレルのようなサービスを作るべきだったけど、作れない。それを自前で作り上げているパラレルは素晴らしいですよね。

友達が共有したコンテンツを楽しむために、共創を

── パラレルとNTTドコモの共創についても教えてください。

三好(NDV):
大まかに言うと、両社のコンテンツレイヤーが重なる部分での共創を計画しています。

NTTドコモはプラットフォーマーなので、コンテンツに触れる場所、売り場になりそうなところには当然投資していかなくてはなりません。そのためマンガ、アニメ、動画ストアなどに投資をし、コンテンツを確保しようとしています。ただ、ユーザーがコンテンツに目を向けるきっかけは、単にストアにコンテンツがあるというだけではありません。友達に「あのマンガ面白いんだよ」と言われて興味が湧くこともありますよね。つまりコンテンツは友達からも流れてくるんです。そのため我々としては、パラレルがハブとなり、NTTドコモが提供するdマーケットの各種サービスを使うユーザーが増えることを期待しています。

とはいえ現在は、両社のコンテンツレイヤーが重なる部分を大きくしていくフェーズ。そのためパラレルとの具体的な共創内容の検討はこれからです。今の段階で無理やり我々のサービスを押し付けてしまっては、パラレルのコミュニティを壊してしまいかねませんからね。今はパラレルの拡大をお手伝いして、パラレルにとって都合のいいタイミングになったら共創したいと考えています。

青木(パラレル):
パラレルはまだまだソーシャルを拡充していかなければいけないフェーズなので、急がずに待っていただけるというのは非常に助かります。

青木(パラレル):
繰り返しになりますが、パラレルとして最も大事なのは、より多くの仲の良い友達と繋がってもらって、ソーシャル性を構築することです。そのためにはやはりエンタメコンテンツが必要で、今は自前で30ほどのコンテンツを用意したところ。今後は最適なタイミングで最適なコンテンツを外部から受け入れていかなければならないと考えています。とはいえ、特定のエンタメ企業と提携すると、中立性がなくなってしまう。その点NTTドコモは動画やマンガなど、あらゆるコンテンツと繋がっていて、ハブになってくれます。そういう会社とご一緒できるのはありがたいですね。

── 最後に、今後のパラレルの展開を教えてください。

青木(パラレル):
経営戦略上、パラレルの初期ターゲットはZ世代ですが、僕らのコンセプトは老若男女に受け入れられると考えています。例えばおじいちゃん・おばあちゃんが地区センターで囲碁や将棋をしていますよね。あれは必ずしも囲碁・将棋が好きというわけではなく、コミュニティを楽しんでいる側面があります。考え方としてはパラレルと同じなわけです。

また、一昔前はテレビやCDなどエンタメの形式が限られていて、友達同士で共通の話題がありました。ですが今はエンタメコンテンツが溢れています。例えばSpotifyには、毎日5万曲の新曲がアップされていて、過去のコンテンツにもアクセスできる。つまり、友達と好きなものの共有がしにくくなっているんです。

でもその逆もあると思うんです。僕自身、推しのコンテンツやアーティストなんかはほとんどありません。むしろ「友達と共有するから楽しい」とすら思うタイプです。そういう逆張りをしているのが今のパラレル。細かくなってしまった現代のエンタメコンテンツを、友達というソーシャルに戻す。「友達の中では流行っている」という状態を作りたいなと思っています。

三好(NDV):
応援しています。引き続きよろしくお願いします。

青木(パラレル):
こちらこそよろしくお願いします。ありがとうございました。

(執筆:pilot boat 納富 隼平、撮影:ソネカワアキコ)