推し活ブームを背景に成長するオンラインくじ市場。ドコモのエンタメを加速させる「RAFFLE」の凄み | フォッグ ✕ NTTドコモ・ベンチャーズ | 株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ

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2025.02.14

推し活ブームを背景に成長するオンラインくじ市場。ドコモのエンタメを加速させる「RAFFLE」の凄み | フォッグ ✕ NTTドコモ・ベンチャーズ

推し活ブームを背景に成長するオンラインくじ市場。ドコモのエンタメを加速させる「RAFFLE」の凄み | フォッグ ✕ NTTドコモ・ベンチャーズ

2024年、株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ(以下「NDV」)は、オンラインくじプラットフォーム「RAFFLE(ラッフル)」を運営するフォッグ株式会社(以下「フォッグ」)への出資を発表しました。

推し活やトキ消費の盛り上がりと共に、オンラインくじの市場が拡大しています。フォッグはこの市場でアーティストやアイドル、スポーツチームなどにオンラインくじのシステムを提供し、市場随一の存在感を発揮してきました。

RAFFLEの競争優位性やオンラインくじの市場性は。オンラインくじに留まらないドコモグループとの共創内容とは。フォッグ代表の関根佑介さんと、NDVの投資担当である川本諒に聞きました。

関根佑介さん(左)と、NDVの川本諒
関根佑介さん(左)と、NDVの川本諒(右)

オンラインくじの人気が高まっている理由

── フォッグの展開するサービスについて教えてください。

関根(フォッグ):
フォッグの事業は大きく①オンラインくじ事業、②オーディション事業、③OEM事業で、現在特に伸びているのが①のオンラインくじプラットフォーム「RAFFLE」です。

関根 佑介 | SEKINE Yusuke フォッグ株式会社 代表取締役CEO
関根 佑介 | SEKINE Yusuke
フォッグ株式会社 代表取締役CEO

株式会社ファンコミュニケーションズやユナイテッド株式会社にて新規事業の立ち上げを数多く手掛ける。企画/設計したサービスは合計7,000万ダウンロード以上。2013年6月にフォッグ株式会社を宇田と共同創業。

関根(フォッグ):
「RAFFLE(ラッフル)」は、ハズレなしのオンラインくじサービスで、ユーザーはアイドルやスポーツチームなどのオリジナルのグッズやコンテンツを入手できます。2021年にサービスの提供を開始してから2024年末までに800件超のオンラインくじイベントを開催してきました。

くじの仕組みはお祭りのくじ引きとほぼ一緒です。くじイベントを選んで、お金を払い、くじを引いて、景品が当たる。景品が後から家に届く点は通常のくじと違いますね。なお、必ず何かしらの景品が当たるため、何も当たらない「ハズレ」はありません。

── オンラインくじの市場性について教えてください。

関根(フォッグ):
フォッグの推計では、国内のエンタメグッズ市場はアーティスト領域、マンガ・アニメ領域を合わせて1兆4,700億円程度あり、そのうちオンラインくじは1,100億円程度あると見込んでいます。今後も市場は拡大していくでしょう。海外まで含めると国内の2倍の市場規模になると考えています。

川本(NDV):
海外にもくじの文化はあるんですか?

川本 諒 | KAWAMOTO Ryo 株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ Manager 投資担当
川本 諒 | KAWAMOTO Ryo
株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ Manager 投資担当

2016年に地銀系VCに出向し、スタートアップ投資を担当。
その後、同グループの投資専門子会社設立に伴い、設立当初よりバイアウト投資・ファンドレイズ等、幅広くファンド業務に従事。
創業期からPre-IPOラウンドまで幅広いステージの企業に対し、これまでに20社以上の投資を行う。
2023年10月よりNTTドコモ・ベンチャーズへ参画。

関根(フォッグ):
日本からアニメ・マンガなどのIPが発信されて徐々に海外でも人気になっているように、ランダムチェキなども海外で次第に受け入れられるようになってきています。まだまだ少ないですがガチャガチャをする文化も出てきましたし、オンラインくじも受け入れられるでしょう。

── 近年、オンラインくじを見かける場面が増えている印象があります。その背景について教えてください。

関根(フォッグ):
Z世代の消費行動において「推し活」が重要な位置を占めているのは周知の通りです。また「『モノ消費』から『コト消費』へ」とは昔から言われていましたが、近年では「トキ消費」がトレンドになっています。トキ消費で重要なのは、二度と同じ体験ができない「非再現性」、貢献への実感がある「貢献性」、コンテンツだけでなく自分も参加する「参加性」です。

オンラインくじはまさにその文脈に当てはまるものとなっています。ライブの記念くじや生誕くじは「今このとき」しか買えない「非再現性」ですし、オンラインくじの売上げはアーティストにも還元されるので「貢献性」もある。当選結果をSNSにアップしたりしてファン同士の一体感も醸成できるため「参加性」もあります。そのため、オンラインくじの人気が高まっているんです。

オンラインくじとECでは扱う商品が異なる。両者の共存は

── オンラインとオフラインでくじの特徴は異なるのでしょうか。

関根(フォッグ):
お祭りやコンビニなどで実施されているオフラインのくじとオンラインくじの違いは、場所の制限がない点と事前の在庫準備がない点が大きな違いです。オフラインでは、当たりが出たらすぐに景品を提供する必要があるので、くじと景品を同時に用意しなければなりません。そうすると、景品が100個ならくじの上限は100回になりますし、くじが100回引かれなかったら景品は余剰在庫となってしまいます。

一方オンラインくじでは、事前に在庫を用意する必要はありません。くじのイベントが終了し、必要な数を確定してから景品を制作します。そのため在庫リスクが非常に低く抑えられ、(サイン物などの一部商品を除いて)在庫切れの心配がありません。

またその場で景品を出す必要がないため、当たりにはモノだけでなく体験を設定できるようになります。例えばアーティストと1対1のお話し会や楽屋招待といったものですね。景品に「XXさんへ」と書くこともオンラインだからできることです。

ただその裏返しで、景品が届くまでに時間がかかってしまいます。とはいえ、他社では最長で3ヵ月ほどかかるものを、フォッグは1〜1.5ヵ月程で済むような体制を整えました。

── オンラインくじはECと共存するものなのでしょうか。

関根(フォッグ):
そもそも、オンラインくじとECではマッチする商品が異なるんです。

例えばアーティストが身に着けていたサングラスや舞台で使っていた小物をECで売ろうとした場合、1点もののため値段設定や販売方法が難しいんですよね。一方オンラインくじでは値付けの必要がなく、点数が少ないものの取り扱いも容易になります。誰もが同じ金額で公平に当たりが出るため公平感もあるし、当たった際の特別感は想像に難くありません。そういった購買体験にエンタメ要素が追加されているのがECと異なるくじの良さです。

両者は目的が異なるので、ライブのTシャツはECで購入し、サイン付きのライブTシャツはオンラインくじにするといった方法で、使い分けて共存させている企業が多いですね。

川本(NDV):
RAFFLEを利用しているのは、アイドルやアーティストが多いですか?

関根(フォッグ):
そうですね。他にも、スポーツチームや出版社にもご利用いただいています。

出版社では、例えば雑誌を制作するために写真をたくさん撮りますよね。でも1,000枚撮影しても実際に雑誌に使うのは10枚程度。でもファンからすると、他の990枚だって欲しいじゃないですか。それで雑誌に使わなかった写真をオンラインくじの景品にするんです。写真はすでに用意されているので、出版社は追加の手間を最小限にして、今まで使わなかった素材を活用して新しい収益源を作れる。最近は映画のセットや劇で使った小道具などをファンにプレゼントするケースも出てきましたね。

関根(フォッグ):
海外対応も進めていて、決済とロジスティクスは、越境ECサービスと組んで、インバウンドで日本に来た方がRAFFLEを通してオンラインくじを買えるように仕込んでいる最中です。多言語化対応も進めています。今年中には海外のユーザー様がさらに直接的にRAFFLEを利用できるようにしていく予定です。

RAFFLEの競争優位性

── NDVがフォッグに投資した理由を教えてください。

川本(NDV):
以前の記事でドコモがエンタメに力を入れているという話をしました。フォッグへの投資もその文脈に沿うものです。関根さんがエンタメ業界に精通していて、会社も成長している。エンタメ分野における、ドコモが目指すステージの重要なパートナーになりうるということで、投資を決断しました。

── フォッグは投資時点で東証グロース市場に上場するユナイテッド株式会社の完全子会社でした。こういうパターンの投資もあるんですね。

川本(NDV):
上場企業の子会社に出資するというケースは多くありませんが、最終的にIPOなどで株式のイグジットが確保できるのであれば、特に独立しているスタートアップと区別せず投資対象としています。

関根(フォッグ):
僕はもともと、フォッグの親会社であるユナイテッドの新規事業部の事業部長でした。とはいえユナイテッドのコア事業は教育と投資。フォッグが扱うエンタメ領域はコア事業ではありません。フォッグ単独でIPOを成し遂げるため、改めてNDVを含めた外部から資金調達を実施しました。

川本(NDV):
投資に際しては、当然競合なども調査しました。実際、マンガ・アニメ分野では存在感を発揮している会社もあるものの、フォッグは取扱い件数を年々倍増させていて、他社と比較しても実績は格段に出ている。オンラインくじでは間違いなくトップランナーの会社だと思っています。

関根(フォッグ):
オンラインくじの仕組み自体を開発することは、全く難しくないんですよね。そんな中フォッグがこの分野で取扱い件数トップを獲得できている理由は、くじの仕組み以外にあります。

まず、フォッグはレーベルや出版社、テレビ局、ラジオ局などと多くの取引があるため、プロモーションを含めた提案を併せてできるんです。例えば「IPを使ったオンラインくじだけでなく、テレビ番組制作も考えてみませんか?」といった具合ですね。先日は商業施設でのポップアップイベントや、ファッションフェスとのコラボを実現しました。また川本さんの言うようにマンガ・アニメではまだまだですが、アーティスト周りだとRAFFLEの認知度も高まっています。

また僕自身がこれまで芸能業界と長く仕事をしてきているので、業界のノウハウがあることも大きな武器です。これはITベンチャーがぱっと出てきてもすぐには真似できないものでしょう。

関根(フォッグ):
手離れの良さもRAFFLEの特徴です。芸能事務所さんがオンラインくじを僕らにお願いしてくれても、マネージャーが忙殺されるようではいけません。アーティストがOKと言ってくれたら、どんな景品を作るか、景品の当選確率、配送手段、製造、問い合わせ対応などはすべてRAFFLEが引き受けます。IP側からすると、許諾と内容のレビューをするだけでいいという点は評価いただいているポイントです。

オンラインくじに限らず、エンタメに関する総合的なタッグを

── フォッグとドコモの共創内容を教えてください。

川本(NDV):
ドコモがスポンサードしているIPなどを活用したオンラインくじの実施を計画中です。

関根(フォッグ):
ドコモはエンタメIPのマネジメント権やアリーナなどの場所をたくさんもっていますよね。一方で僕らはマネタイズやコンテンツを盛り上げる仕組みがあるので、オンラインくじに限らず、エンタメに関する幅広い相談をいただいています。

川本(NDV):
代表例が、2025年2月に情報解禁になった『ミスタートロット ジャパン』です。ミスタートロットは韓国のオーディション番組で、日本ではNTTドコモ・スタジオ&ライブが版権をもち展開することになりました。フォッグにはオーディション機能の開発などで協力してもらっています。

関根(フォッグ):
オーディション番組は毎年開催されるはずなので、我々にとっても大きな仕事になるはずです。番組もスタッフが会場で泣いてしまうくらい盛り上がっていると聞いているので、楽しみですね。

川本(NDV):
dアカウントでRAFFLEにログインできるようにするプロジェクトも進んでいます。dアカウントをもっている人だけがログインできるオンラインくじを出すといった可能性もありますし、それが実現すればdアカウントの利用促進にも繋がるはずです。

── 最後に、フォッグの中長期的な展望を教えてください。

関根(フォッグ):
RAFFLEに関しては、3つの柱を考えています。まずは大規模アーティストを扱えるようにすること、マンガ・アニメ領域の取り扱いを拡大すること、ライブ会場や店舗でもくじをできるように販売チャネルを多様化することです。

── ライブ会場や店舗といったオフラインへの展開もあり得るんですね。

関根(フォッグ):
店舗にQRコードを設置したり、DVDや書籍にシリアルコードでクーポンを発行したりと、オンラインくじをやっていると、オフラインでも色々なことができるようになるんです。

まだ具体的なことはまだ語れませんが、僕らはオンラインくじの会社になりたいわけではありません。コンテンツホルダー様の素材を活用したグッズ関連の新サービスも開発中です。

川本(NDV):
私もフォッグはオンラインくじの会社ではなく、素材屋だと思っています。フォッグの本懐は、様々なエンタメの素材を使って色々な展開を仕掛けていくこと。日本のIPは海外受けがいいという意味でも、海外展開を楽しみにしています。共創にしても、ドコモと相性がいい会社だと思うので、オンラインくじに限らず、ドコモのIPビジネスのパートナーとして色々な形でご一緒していきたいですね。

── 関根さん、川本さん、本日はありがとうございました。

(執筆:pilot boat 納富 隼平、撮影:ソネカワアキコ)