ドコモでも10倍の生産性を実現。「企業内データ活用サービス」との共創は、日本市場へのローカライズ|米Alation ✕ NTTドコモ・ベンチャーズ | 株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ

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2024.11.19

ドコモでも10倍の生産性を実現。「企業内データ活用サービス」との共創は、日本市場へのローカライズ|米Alation ✕ NTTドコモ・ベンチャーズ

ドコモでも10倍の生産性を実現。「企業内データ活用サービス」との共創は、日本市場へのローカライズ|米Alation ✕ NTTドコモ・ベンチャーズ

2023年、株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ(以下「NDV」)は、企業向けデータインテリジェンスプラットフォームを開発するAlation, Inc.(以下「Alation」)への出資を発表しました。Alationは、企業内で膨大に増えていく様々なデータを見つけ出し、分析する手間を大幅に減らし、生産性向上を後押しするプロダクトです。

NDVはAlationのどこに魅力を感じ、投資を決め、NTTグループとどのような共創を築いてきたのか。AlationのDavid Chaoさんと、株式会社NTTドコモ(以下「ドコモ」)の山田直治、シリコンバレーでAlationへの投資を担当するNDVの井上正裕に迫ります。

※以下、主に会社を指す場合には「Alation社」、サービスを指す場合には「Alation」と表記します。

ドコモのデータアナリストの生産性は10倍に向上

── 最初に、Alationについて教えてください。

David(Alation):
Alationは、企業がデータを理解し、信頼できるようになるためのデータインテリジェンスプラットフォームです。

David(Alation):
大規模な組織には、様々なシステムを横断して非常に多くのデータが存在しています。そのため、データアナリストであれ、データ主導でより良い意思決定を行おうとする経営幹部であれ、「どのデータを使えばいいのか」「このデータは信頼できるのか」といった判断が難しくなっているんです。Alationはこうした課題を解決に導きます。

── Alationを利用する顧客のメリットはどのようなものでしょうか。

David(Alation):
Alationを直接利用するのは、主に社内のデータアナリストです。Alationを使えば、彼らはこれまでより簡単にデータを見つけられるようになるでしょう。非アナリストからのコラボレーションリクエストも簡単になります。例えば「このデータは正確かな?」「このデータセットを理解するのを助けてくれる?」と尋ねるようなイメージですね。一度得たデータセットは、再利用して組織内の同僚と共有することも可能となります。

Alation社の顧客を見てみると、全体的にデータアナリストの仕事量が減り、生産性が向上しています。ドコモを例に挙げると、データアナリストの仕事量は3割減り、生産性は10倍向上しました。経営陣が戦略的な意思決定に役立つデータにアクセスしやすくなることも、Alationの価値と言えるでしょう。

(提供:Alation)
(提供:Alation)

── Alationはドコモの力も借りて、日本にも参入しています。他国と日本の違いはありますか?

David(Alation):
今、Alationは世界で約600の顧客を抱えていて、その大半は北米、ヨーロッパ、オーストラリアにいますが、近年はアジア太平洋地域にも進出しています。日本では現在、製品のローカライズを進めているところです。

どの市場にも独自の特徴があるため、新しい市場に参入する際は、常に顧客に共感し、理解を深めねばなりません。我々も日本市場にとって何がベストなのかは、現在学び続けている最中だと言えるでしょう。

Alationが問題解決を支援するのは、一般的に大量のデータを保有する大企業です。このような企業は規模が大きいため、通常リスクを回避する傾向にあり、実績がある技術を選びたいと考えています。特に日本では、信頼を築くために企業の導入実績が重要であり、だからこそ、ドコモのようなパートナーを持つことは非常に重要で、パートナーシップを結べたことに感謝しています。投資という面でも、私たちはNTTドコモ・ベンチャーズという本当に強力な基盤を得られました。

膨大なデータの発見と利用という課題を解決

── NDVとAlation社の出会いについて、教えてください。

井上(NDV):
2年ほど前、ドコモにおけるデータ分析の生産性を向上させられるサービスを探していました。それで調査を進めてみると、アメリカの多くの企業がAlationを使っていることを知ったんです。Alation社のマーケティング資料を見てみると、どの顧客もAlationの利用に満足しているようで、とてもわくわくしたのを覚えています。

それで導入に向けてAlation社と話し合いを重ねたんです。日米の違いもありますし、ドコモ独自の環境に合わせないといけないこともあり、骨の折れる作業でした(笑)。ですが同社は根気強く提案を続けてくれて、最終的にドコモにAlationを導入できた、というわけです。

── Alationを導入する以前の、ドコモの課題を詳しく教えてください。

山田(ドコモ):
現在、ドコモは1億人以上のdポイントクラブ会員を抱えていて、通信に加え、決済やエンタメなど、様々なサービスを提供しています。2024年に前田義晃がドコモの代表取締役社長に就任してからは「お客さま起点の事業運営」をキーワードに、dポイントクラブ会員のカスタマーエクスペリエンスを最大化するための取り組みを進めてきました。この取り組みを一層進めていく上で、各サービスを通じて得られたお客さまの行動データを横断的に活用することは不可欠です。

山田(ドコモ):
この過程においての最大の課題が「データの発見」です。様々なサービスが多様なデータを生み出しているため、社内にはテーブル構成や仕様が異なる膨大なデータが溢れています。そのため、サービスに関わっていない人がそのデータを見つけることは、非常に困難だったんです。

実はドコモでは、従前から他のデータカタログツールを導入していました。しかしこのサービスではデータの検索はできるものの、似て非なるデータが複数抽出されてしまっていたのです。そのため自分の欲しいデータがこのデータで合っているのか、値は正確なのか、データ抽出クエリは正確なのか、自信がもてませんでした。つまり、このツールでは本当の意味で「データの発見」ができなかったのです。

このような状況だったため、データが欲しい場合には、サービスに詳しい人に「d払いの決済データをください」と逐一依頼する必要がありました。これでは属人的に過ぎますし、データ活用が民主化されません。

そこでこのデータ発見に関する課題を解決すべく、Alationを紹介してもらい、PoCを経て導入に至りました。

── NDVは2023年にAlationに投資もしています。そもそもNDVは日米で投資方針に違いはあるのでしょうか。

井上(NDV):
CVCとしての投資方針は日米で大きな違いはなく、戦略性と財務的リターンの両方を見ています。強いて違いがあるとすれば、日米でIPO環境が大きく異なるため、アメリカの方が財務面での評価が厳しくなる傾向にあります。そのためアメリカではトップクラスの企業にしか出資できません。Alation社は経営状態が良好でしたし、無事にドコモへのAlation導入が成功したのを見て、日本企業全体にもAlationを届けたいと考えたために投資に至りました。今後は積極的に日本市場でAlationを販売し、ドコモが体験した生産性向上を多くの企業に提供していきたいですね。

共創としての日本ローカライズ。今後の鍵を握るのは生成AI

── Alationを導入した成果はいかがでしょうか。

山田(ドコモ):
まず、最も大きな課題だったデータ発見にかかる時間は30%削減できました。データを発見した後、解析してお客さまのCX向上につながる施策を打つための分析業務も10時間から1時間に短縮しています。つまり、Alationの導入により生産性は10倍(以上)になりました。

山田(ドコモ):
ただ、単にAlationというツールを導入したというだけで、この成果が実現できたわけではありません。我々がアメリカ本社へ訪問して意見を交換し、お互いが目指す方向性やロードマップを共有したことが導入成功へ大きく貢献したと考えています。

David(Alation):
その通りですね。お互いが辛抱強く、導入への議論を重ねられたことが導入成功の秘訣だったと思います。その結果としてドコモが実現した成果は本当に素晴らしいものですね。

山田(ドコモ):
また、Alationのドコモ導入にあたっては、単なる導入ではなく「共創」という観点を大事にしました。特に、当時Alationは日本語へのローカライゼーションをしていなかったので、そのプロセスに一緒に取り組めたことは有益でしたね。日本人は英語だけだとサービスを使いにくいですから。日本人にわかりやすくなるように、共創として細かい修正までできたことも、導入成功の秘訣だと感じています。

ちなみに、サービスそのものだけでなく、研修プログラムも含めて日本語化を進めました。これによってAlationの活用が進み、結果的に組織内でサービスがより使われる結果となっています。

David(Alation):
共創ということで、Alationとしても自分たちを単なるテクノロジーベンダーとしてではなく、ドコモの成果を実現するためのビジネスパートナーとして考えるように努めました。出会ってからの過去2年間、本当にアクティブな対話ができ、共通のゴールに向けて一緒に結果を求めていけたと思います。

── 出資から1年が経ちました。導入前に考えていたことと、導入後で何かギャップがあれば教えてください。

山田(ドコモ):
想像以上に使いやすかったことが、いい意味でのギャップでした。ユーザーインターフェースが良いために、本当に簡単にデータが発見できるんです。先述した生産性が10倍になるという成果は想像以上でした。データを見つけるだけではなく、例えばそのデータを抽出するSQLも含めて組織内で共有できたりと、データ活用のためのノウハウについても、導入後に驚いたことを覚えています。

David(Alation):
そうした言葉はとても嬉しいです。引き続きポジティブな驚きを提供できることを願っています。

── 共創という観点から、今後の展開についてのアイディアはありますか?

David(Alation):
日本へのローカライゼーションの旅はまだまだ続きます。例えば、現在私たちのヘルプマニュアルは英語で書かれていますが、その文書を翻訳することは、日本のユーザーにとっても有益でしょう。また他国では、Alationの現地のユーザーグループがあるんです。これはお客さまがベストプラクティスを共有しあい、互いに学び合うエキサイティングな集まりです。今後日本のお客さまが増えていけば、このようなコミュニティを日本でも築けるかもしれないと思うと、今からわくわくしています。

山田(ドコモ):
プロダクトのアップデートという意味で将来的には、データリテラシーがない社員でも簡単にデータを使って、自分の業務に活かしていくことが重要になってくるでしょう。現在、既に社内では3,000人以上が毎月1回以上、Alationを活用していますが、彼ら以外でも簡単に使えるプロダクトになっていけると嬉しいです。

そういう意味では、今後は生成AIが重要なポイントになってくると思います。今、例えば「先月の20代女性のd払いの決済額の平均値を知りたい」となったら、d払いの決済金額やテーブルを探して、SQLを作成・実行して、データを抽出しています。しかし生成AIを用いて自然言語で「先月の20代女性のd払いの平均決済額を教えて」と書いてポンと答えが出てきたら、Alationの利用者が増えるのは間違いありません。そんな世界を実現してほしいですね。

David(Alation):
確かに、近年は生成AIに高い関心が寄せられていますよね。AIによるモデルを作成する際、企業はまずモデルを構築するためのデータを発見しようとするため、こうした変化はAlationに新しいユーザーをもたらしました。

David(Alation):
さらに、多くのデータチームが、組織内で行われているAI作業のガバナンスをより可視化したいと考え始めています。そのため、Alation社は今期中に、新しいAIガバナンス・ソリューションをリリースする予定です。これは、データチームが組織内でどのAIモデルが使用されているかを理解して文書化するのに役立つだけでなく、どのデータセットがAIモデルの訓練に使用されているかを理解するのにも役立ちます。そうすれば、適切なデータが使用され、AIモデルを通じて機密データが外部に漏れるといった問題がないことを保証できるでしょう。

似た要望は日本だけでなく、海外からも寄せられています。この部分には積極的に投資していきたいですね。

井上(NDV):
改めて、Alationのローカライゼーション・日本市場拡大という意味で、NDVとドコモはAlation社にとっての素晴らしいパートナーになれていると実感しています。高度なデータスタックがあるドコモの生産性向上の事例は、他の企業のAlation導入にあたって大きな影響を及ぼせるはずですし、ドコモによる日本市場におけるAlationの販売にも貢献するでしょう。

今後、両社の共創を一層加速させて、日本企業のデータ活用における生産性を高めていきたいですね。

── Davidさん、山田さん、井上さん、本日はありがとうございました。

(執筆:pilot boat)